北野映画がお嫌いな方へ


監督 北野武
製作 舘幸雄
脚本 北野武
出演者 真木蔵人
島弘
撮影 柳島克己
編集 北野武
配給 東宝
公開 1991年




北野映画がお嫌いな方が、

ディアナさんを除いて、多いようですが、

この映画は、暴力映画だと北野映画を毛嫌いしていた故淀川長治さんが、

その評価を一変させて、「日本映画で一番美しい」とまで言わしめた、名作です。

一切、暴力は、出てきません。

あらすじ(ウィキペディアより)

収集車でのごみ回収業務を仕事とする聾唖の青年・茂が、ごみとして出された、先端の欠けたサーフボードを持ち帰る。 茂はそのボードに発泡スチロールを継ぎ合わせ、同じく聾唖の彼女・貴子を誘い海へ向かう。

茂はサーフィンにのめりこむ。貴子は砂浜に座っていつもそれを見つめていた。 修繕したボードは程なく壊れ、新品を買った茂はますますサーフィンに夢中になる。 初めは茂をバカにしていた地元のサーファーたちも、サーフィンに打ち込む茂を見直すようになる。 ついに茂は仕事を休みがちになり、貴子のこともなおざりにしてしまう。

しかし、上司に叱咤され、貴子の涙をみた茂は生活を取り戻す。 サーフィンを趣味として楽しみ、上達した腕前で大会での入賞も果たす。

ある日、貴子が海にやってくると・・・。






私が、以前より力説しているように、

わが国には、「建前と本音」が存在します。

「建前」は、大抵美辞麗句で覆われている事が多いですが、

それを真に受けると、酷い目に遭いますね。

そして、「本音」は大抵しぐさによって表現されるのであります。

(学校職場におけるいじめが、好例でしょう。)

ここに、聾唖者という「建前」が言えない主人公が登場します。

そして、同じく聾唖者である恋人。

二人の手話によって交わされる愛の表現の、

なんて美しい事でしょう!

そこには、いかなる駆け引きもありません。





とかく、障害者などを扱った映画は、

同情という視点から描かれることが多いですが、

山田洋次が↑その典型)

この映画に貫かれた視点は、共感(empathy)です。

これは、私の知る限り、日本映画には珍しい事であり、

北野武の映画だけ、海外で評価が高いのは、

こういった視点から、物事を捉えるからでしょう。

北野武自体、この映画を作った時には、

まだ、監督として誰にも認めらていなかった時代で、

主人公が見よう見真似で、サーフィンに挑戦し、

周囲の人間が嘲笑する姿と、ダブります。

彼自体が、聾唖者と同じ、マイノリティだったのです。


私としては、ラストシーンが気に入らないのですが、

北野映画を毛嫌いする方も、

一度は見ていただきたい映画です。