北野映画がお嫌いな方へ
北野映画がお嫌いな方が、
ディアナさんを除いて、多いようですが、
その評価を一変させて、「日本映画で一番美しい」とまで言わしめた、名作です。
一切、暴力は、出てきません。
あらすじ(ウィキペディアより)
収集車でのごみ回収業務を仕事とする聾唖の青年・茂が、ごみとして出された、先端の欠けたサーフボードを持ち帰る。 茂はそのボードに発泡スチロールを継ぎ合わせ、同じく聾唖の彼女・貴子を誘い海へ向かう。
茂はサーフィンにのめりこむ。貴子は砂浜に座っていつもそれを見つめていた。 修繕したボードは程なく壊れ、新品を買った茂はますますサーフィンに夢中になる。 初めは茂をバカにしていた地元のサーファーたちも、サーフィンに打ち込む茂を見直すようになる。 ついに茂は仕事を休みがちになり、貴子のこともなおざりにしてしまう。
しかし、上司に叱咤され、貴子の涙をみた茂は生活を取り戻す。 サーフィンを趣味として楽しみ、上達した腕前で大会での入賞も果たす。
ある日、貴子が海にやってくると・・・。
私が、以前より力説しているように、
わが国には、「建前と本音」が存在します。
「建前」は、大抵美辞麗句で覆われている事が多いですが、
それを真に受けると、酷い目に遭いますね。
そして、「本音」は大抵しぐさによって表現されるのであります。
(学校職場におけるいじめが、好例でしょう。)
ここに、聾唖者という「建前」が言えない主人公が登場します。
そして、同じく聾唖者である恋人。
二人の手話によって交わされる愛の表現の、
なんて美しい事でしょう!
そこには、いかなる駆け引きもありません。
とかく、障害者などを扱った映画は、
同情という視点から描かれることが多いですが、
(山田洋次が↑その典型)
この映画に貫かれた視点は、共感(empathy)です。
これは、私の知る限り、日本映画には珍しい事であり、
北野武の映画だけ、海外で評価が高いのは、
こういった視点から、物事を捉えるからでしょう。
北野武自体、この映画を作った時には、
まだ、監督として誰にも認めらていなかった時代で、
主人公が見よう見真似で、サーフィンに挑戦し、
周囲の人間が嘲笑する姿と、ダブります。
彼自体が、聾唖者と同じ、マイノリティだったのです。
私としては、ラストシーンが気に入らないのですが、
北野映画を毛嫌いする方も、
一度は見ていただきたい映画です。