「一番美しく」

「一番美しく」

公開 1944年(昭和19年

 
監督 黒澤明
製作 宇佐美仁
脚本 黒澤明
出演者 矢口陽子
入江たか子
志村喬 
 
 あらすじ
兵器に搭載される光学機器を生産している東亜光学平塚製作所では、戦時非常態勢により生産の倍増を計画発令する。男子工員は通常の2倍、女子工員は1.5倍という目標数値が出されるが、女子組長の渡辺ツル(矢口陽子)を筆頭とする女子工員達は、男子の半分ではなく2/3を目標にしてくれと懇願、受け入れられる。奮発する女子達だが目標達成は生易しくはなく、一時的に上昇した生産高は疲労や怪我、苛立ちから来る仲違い等により下降する。しかし、女子工員達の寮母や工場の上司達の暖かい協力、そして種々の問題を試行錯誤しながら解決し、更に結束を強めた彼女達の懸命な努力は再び報われ始める。

私は、黒澤明という映画監督を大変尊敬しています。
それは、私のブログを読んでいただいている方には、
十分理解していただけると思います。
けれども、私は「あばたもえくぼ」というか、
「贔屓の引き倒し」は致しません。
1944年に、「姿三四郎」「續姿三四郎」に続けて作られたこの映画は、
明らかに戦意高揚のプロパガンダ映画です。
ドナルド・リチーのよると「国策に沿い、しかもお金を儲けたいという要請のもとに。」作られた映画だそうです。
だから、いくら駆け出しの新人監督で軍部に盾つくことなど不可能だったとは言え、
黒澤氏にも、戦争責任はあると私は思います。
 

 
(↑映画の冒頭に、このような画面が
 
 
ネットで、この映画の評を少し拾い読みしてみると、
「実は、裏に反戦の意味が込められているのでは?」とか、
「厳しい軍部の検閲があったから仕方がなかった。」と言うのが多かったですが、
この映画を観た限りにおいては、そういうのはまさに「贔屓の引き倒し」
敗戦が濃厚になっていた時代に作られた映画ですが、
至る所に、戦争高揚のメッセージが込められています。
第二次世界大戦後に出版された著名な文学者の全集には、
戦時中に書かれた文章がカットされている事が多いのだそうですが、
まあ、そう云う事をしないでいるだけでも、ましなのかもわかりませんがね。
 
と言っても、お話は黒澤氏好みの、
「一生懸命努力する女性」ばかり出てくるのでそれは好感は持てました。
「一番美しい」女性とは、
容姿がどうのと言うのではなく「目標に向かって努力する女性」なのだそうです。
このあたりのテーマは、
戦後1946年に作られた
内容は180度違う(笑)「わが青春に悔いなし」原節子の役に、
引き継がれているんでしょう。
日本は、女性の社会進出が遅れているとよく言われていますが、
日本で一番女性が社会で活躍した時代は、皮肉なことにファシズムの時でした。
勿論、これは戦争で男性が出払ってた窮余の策だったんでしょうが、
これもまた「女は戦争を望まない」などと言う妄想への反論になるでしょう。
ちなみにこの映画に出てくる矢野陽子さんは、後の黒澤氏の奥さんです。↓
 


 
 
最初から、
期待してみていなかったんですが、
全然お勧めできない映画でした。