タテマエとホンネ4


1920~

ロングセラー『「甘え」の構造』の著者。アメリカに留学した時に、日本的な「甘え」が通用しないことにカルチャーショックを受け、独自の「甘え」理論を作り、精神分析の土着化に貢献したとされる。海外から入ってきた思想等を、そのまま翻訳するだけの人も多いなかで、精神医学の臨床の必要性から、「日本人の思想」を作った人だと私は思います。(『「甘え」の構造』がロングセラーを続ける理由も、たぶんそれだからでしょう。)当然、「タテマエとホンネ」の問題にも、関心があるようです。


 「タテマエというのは、それによって衆の一致がはかられている何らかの取りきめである。これに対してホンネというのは、「タテマエはそうだがホンネはこうだ」といわれるように、タテマエのウラにあるもの、いわばタテマエを立てるに当たっての隠れた動機のごときものであるということができる。このことからタテマエとホンネの関係がオモテとウラのそれであることは明らかであろう。この二つは一見矛盾するように見えることがあるかを知れない。しかしだからといって、その中一方だけが本当で、他方が嘘だということにはならない。どちらも本当なのである。タテマエを立てているのは他ならぬホンネである。しかしホンネそのものはタテマエのウラに隠れていることが前以て了解されているのである。」

(「表と裏」弘文堂 1985年)