タテマエとホンネ7


1933年~

若いころから神経症に苦しみ、それを克服しようとして、フロイト精神分析学にのめりこみ、「岸田心理学」ともいえる独自の心理学を形成した人(と、私は思う)。近代日本は精神分裂病統合失調症とよばなければならないが)に侵されているなんて、嘘に決まっているが、アカデミズムにとらわれず(「学者・研究者としてどの学会にも属していない」のだそうだ)、わかりやすく著述するので、読んでいて大変面白い。「タテマエとホンネ」に関しても、随所に独自の見解が述べられている。
 
著書「ものぐさ精神分析」 (青土社、1978年)
  「不惑の雑考」 (文藝春秋、1986年)
  「ふき寄せ雑文集」 (文藝春秋、1989年)
  「フロイドを読む」 (青土社、1991年
  「官僚病の起源」 (新書館、1997年)
  「性的唯幻論序説(文春新書)」 (文藝春秋、1999年)
  「日本がアメリカを赦す日」 (毎日新聞社、2001年)

「 このように非常に異なるごまかし方をしている日本文化と欧米文化が幕末にぶつかり、日本文化のほうが押し流され、日本人は伝統的なやり方に自信を失い、欧米の規準を取り入れて日本を西洋化しようとしはじめたわけである。欧米の規準から見れば、(もちろん、この規準を自覚的に相対化していれば話は別であるが、)日本のやり方は次のように見える。すなわち、

一、タテマエとホンネの使いわけは「不誠実」、「偽善」と見える。
一、「甘え」は「幼児的」と見える。
一、相手に対する暗黙の配慮、堂々と自己主張しない遠慮の態度などは「卑屈さ」と見える。」

(「幻想の未来」河出書房新社 1985年 P41)