「八月の狂詩曲(ラプソディ)」

八月の狂詩曲(ラプソディ)」


Rhapsody in August
監督 黒澤明
製作 黒澤久雄
脚本 黒澤明
出演者 村瀬幸子
井川比佐志
音楽 池辺晋一郎
撮影 斎藤孝
上田正治
編集 黒澤明
配給 松竹
公開 1991年5月25日




毎年、この季節になると、

新聞や、TVには、決まって終戦記念日の特集が組まれ、

「平和への誓い、新たに」

とか何とかいう言葉が氾濫します。

特に、広島、長崎への原爆投下と、

その被害の大きさ、今も後遺症に苦しまれている方々の近況が、

大きく報道されます。

私は、前の戦争が、多くの日本人を不幸に陥れた事に、

異議を唱えるつもりはありません。

けれども、私たちは同時に、

というよりまず、前の戦争の加害者だったのです。

(2000万人の中国人を殺しました!)

その視点が、日本人の意識に著しく欠落していると思うのは、

私だけでしょうか?

アメリカ軍が、広島に原爆を落としたのは、

広島が、軍需産業の町だからという理由もあったのです。)


黒澤氏は、かねてから原子力について深い関心を寄せており、

「生き物の記録」(1955年),「夢」(1990年)等に、

原子力が制御できなくなる世界の恐ろしさを描いています。

そして、晩年のこの「八月の狂詩曲」においても、

わざわざハリウッドのスター、リチャード・ギアを招いて、

今なお原爆投下の後遺症に苦しむ長崎の人々の姿を描きました。

原爆で夫を失った老婆が雨の中を走っていくラストシーンは、

胸が詰まるものがあります。




けれども、、当然のことながら、

この映画は、アメリカ人の激しい反感を呼び起こしました。

「日本人は、被害者意識が強すぎる。」

中でも、劇中リチャード・ギアに、

アメリカ軍の長崎原爆投下を謝らせた事が、

いたくアメリカ人の反感を買ったようです。




私は、どちらかと言えば、アメリカ人の視点に共感します。

というより、芸術家があまり自分の専門外の事に、

口をはさむ事は、止めた様がいいのじゃないかと思います。


黒澤氏が、反戦を唱えるのなら、

まず、日本軍が中国大陸やアジア全般で行った残虐行為を、

映画化すべきだったと思うのですが。。。