「天国と地獄」

「天国と地獄」

1963年公開
 

 
皆さん、お待たせいたしました
(笑)
長らく休んでいましたが、
待ちに待った、「黒澤シリーズ」の復活です

私は、若いときから、歳をとっても、
「近頃の若いもんは。。。」とだけは言いたくないと心に誓ってきましたが、
最近、若い方の映画ブログをいろいろ拝見し、
そのコメントを読ませていただいて痛感するのは、
皆さん、古い映画をあまりご覧になっていないんだなあ~と言う事です。
今は、便利な時代で、レンタルショップやネットで、
古い映画をいくらでも観ることができます。
現在巨匠と呼ばれている、たとえばS.スピルバーグや、M.スコセッシにしても、
如何に過去の映画をよく見て研究し、
過去の偉大な監督へ敬意を失っていない事か!
その点、日本人は、昔から「熱しやすく冷めやすい」民族と呼ばれています。
日本の社会システムを鋭く批判したカレル・ヴァン・ウォルフレンは、
 
日本は歴史がない国だ。
 
と言いました。
要は、流行に左右されやすいんですよね。
アメリカでは、G.ルーカス「スター ウォーズ」のヒットによって、
黒澤明が日本で再評価された。と思われているそうですが、
あながち、嘘とも言い切れません。
そう云う訳で、世界の映画に多大な影響を与えた、
黒澤映画のレビューを続けたいと思います。
かつて、日本にはこんな偉大な映画監督がいたんだと、
思い出してもらえれば幸いです

あらすじ(ネタバレ)

製靴会社常務・権藤の元に息子を誘拐したと誘拐犯から電話が入る。しかし誘拐されたのは社用車運転手、青木の一人息子・進一だった。誘拐犯はそれでもなお権藤に身代金3000万円を要求してくる。だが権藤には翌日までに5000万円を大阪に送金し、次期株主総会で現経営陣を一掃しようとの魂胆があった。身代金を払わねば進一の命が危ないが、大阪への送金をしないと地位も財産もすべてを失うことになる。権藤は葛藤の末、秘書・河西の裏切りをきっかけに身代金支払いを決意する。犯人からの特急こだまを利用した意外な受け渡し法の指示により、進一は無事解放されるものの、身代金はすべて奪われ、犯人にも逃げられる。
戸倉主任警部率いる捜査陣は、進一の記憶や目撃情報、電話の録音などを頼りに捜査、犯人のアジトを突き止めるが、そこにいた共犯の男女はヘロイン中毒で死亡していた。主犯への足がかりは失われるが、その時身代金受け渡し用のかばんに施されていた仕掛けが発動し、犯人をインターンの竹内銀次郎であると断定する。竹内の犯罪に憤る戸倉たちは、確実に死刑にするためにあえて竹内を泳がせて犯行を再現させ、共犯者殺害の証拠をつかもうとする。執念の捜査が実り、ついに竹内は逮捕される。
後日、竹内の死刑が確定、権藤は竹内の希望により面会することになる。不敵な笑みを浮かべながら語る竹内だったが、その体の震えは止まらず、ついには権藤に向かって絶叫する。竹内は刑務官に取り押さえられて連行され、二人の間にはシャッターが下ろされる。
 
モノクロ画像に色を入れると言う手法はフランシス・フォード・コッポラ監督の『ランブルフィッシュ』(1983年)、スティーブン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』(1993年)でも使用され、同じく誘拐ものの要素がある『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年)では、主人公の刑事がモノクロの背景の中で煙突から上がるカラー煙を見て「天国と地獄だ」とつぶやき、犯人の居場所が突き止められるオマージュとして引用された。
 

 
以上は、Wikiからの丸映しですが、
はっきり言って、この映画が、黒澤作品の真骨頂である、
社会性、芸術性、娯楽性を兼ね備えた最後の作品だと私は思います。
この映画が公開された後、この映画を模倣した誘拐事件が次々に起きて、
社会問題になったそうです。
それだけ、黒澤明が時代とシンクロしていたという事でしょう。
以前に何度も書きましたが、それ以降のカラーになってからの作品は、
ゲージツ的ではありますが、
同時代の人々の考えている次元からどんどん離れていく。
いわば、神棚に祭り上げられてしまった人間の悲劇とでも申しましょうか?
 

 
山崎努演じる犯人には、黒澤明御贔屓のドストエフスキー罪と罰』の主人公ラスコーリニコフの影響がかなり濃厚です。
医者の卵が、何であんなに貧しいんだ!(笑)という疑問は残りますが、
安易な左翼知識人は、
 
「貧乏」=「善」
「お金持ち」=「悪」
 
という図式で、なんでも捉えがちです。
 

 
この映画は見事にそういう図式を見事に裏切っています。
(こういう点が、日本では黒澤作品が敬遠される一因かもしれませんが。)
 

三船敏郎演じる苦悩する権藤さんを見ていると、
「人間の本当の強さとは何だろう?」と考えてします。

アクション映画としてみても、
当時の最新の電車であった「特急こだま」での、
身代金の受け渡しのシーンの迫力は、
今でも色褪せていません。
 


この映画も、ハリウッドでさんざんリメークするという噂があったのですが、
実現しなかったようです。

難しい理屈の映画が嫌いな方も、
純粋なサスペンス映画として楽しめる作品です。
お暇な方は、ご覧になってください。