映画「浮雲」を鑑賞する!

映画「浮雲」を鑑賞する!


 
1955年 日本
私は太宰治と言う小説家が大嫌いですが、(とか言って、殆ど作品は読んでいる。
太宰治に代表される戦後流行した所謂無頼派の作家たちと、
林芙美子(1903~1951)は、似たような系列に属する作家かと思っていましたが、
これが全然違うらしい。
林芙美子「放浪記」(1930年)は若い頃読んだ記憶があって、
(でも、よく判らなかった。
他は全然知らなかったんですけれど、この浮雲はいい作品ですね。
敗戦直後の荒廃した世相を背景に、
段々堕落していく、けれども女にもてまくる富岡森雅之)と、
何だかんだって、彼と腐れ縁を切れないゆき子高峰秀子)。
太宰治の小説の主人公は、お金持ちのお坊ちゃんで、
周りの人間に甘えまくる、そういう処が私は嫌なんですが、
同じ女たらし 
でも、なんとなくこの富岡なる人物には共感をもてました。
映画の中で、
何度も大日本帝国華やかなりし頃の回想シーンが出てまいりますが、
それと、ごみごみした戦後の焼け跡や闇市の風景とのギャップが生々しい。
敗戦によってすべてを失った
当時の日本人の荒んだ気持ちがよくでいたと思います。
と、読んだことのない林芙美子の原作小説と
成瀬巳喜男(1905~1969)のこの映画を混同して話をしておりますが、
如何せん、成瀬巳喜男の映画を初めて観るので、
何とも論評しがたいのでありました。
脚本も、有名な女性脚本家が書いたものなのだそうですが、
そのせいか、女性の視点で当時の世相がよく描かれているような気が致しました。
小津安二郎の映画のように、
女優さんを「奇麗、奇麗」

にだけ撮らない処も良かったです


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私が、この時代の映画を好んで観るのには、
話は暗いものが多くても何かどこかに希望が感じられる部分が多いからです。
戦前の日本の古いしきたりや風習が米軍のB29の空襲によって全部燃え尽きて、
なんか青空が見えてすがすがしい気分が私には感じられるんです。
(お腹は空いていたでしょうけれどね
。)
1950年代に、日本映画の傑作が目白押しに出てきたのは、
戦争によって抑えられてきた日本人の文化的創造力が爆発したからだと思う。
貧しくても、民族的活力に溢れた時代だったんでしょう。
今の時代には、全く欠けているものです。

全く映画評になっておりませんが(笑)
いい映画でした。
観ておられない方は、是非。