「醜聞(スキャンダル)」(黒澤明作品)

醜聞(スキャンダル)

1950年
あらすじ:バイクがトレードマークの画家、青江一郎(三船敏郎)は、絵を描きに行った山で知り合った有名な声楽家、西條美也子(山口淑子)と一緒にいるところを雑誌社「アムール」のカメラマンに撮られ、嘘の熱愛記事を書かれる。これに憤慨した青江がアムール社へ乗り込んで編集長・堀を殴り倒したことで、更に騒ぎが大きくなってしまう。そんな折、青江のもとに蛭田と名乗る弁護士(志村喬)が現れた。「無報酬でも良いから、ぜひ」という蛭田を青江は信用し、弁護を依頼するが……。
 
これはまた、黒澤明らしい生真面目なイエロージャーナリズム批判の映画でした。
メッセージ性が前面に出過ぎると、黒澤映画はつまらなくなると思うんですが、
まさにその通りの映画でした。
事実上の主人公は、志村喬演じる情けない弁護士蛭田さんでして、
Wikiによると、ご本人が
 
「自分の演じた役柄の中で一番好きなものに、本作の蛭田乙吉を挙げている。」
 
そうなんですが、
名作「生きる」 (1952年)でも感じたことなんですが、
私には、ちょっと演技が大袈裟すぎるように思える。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
実は被告のに買収されてしまった蛭田さんは自分の事を「蛆虫」と呼びますが、
本当に蛆虫のように生きている人間は、
もっと虚勢を張って見かけは堂々としているんじゃないのか
このように、自己嫌悪で反省ばかりしている人間は、
極めて良心的な部類に属すると思うんですけど。
(映画の最後で蛭田さんの良心が最大限に発揮されることになります。)
フランク・キャプラあたりの影響を受けた(であろう)一種の法廷劇の趣があります。
でも、真の意味での法治国家とは言えない日本 
では、
裁判で問題が解決されることは殆どない。
だから、観終わってちょっと空々しい気分になりました。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
※ふと思い出したのは、
闘病中の夏目雅子の写真を盗撮したカメラマンが、
彼女の葬式の時に、夫(伊集院静)に殴られた事件です。
カメラマンだって、生活していくために仕事で盗撮したんでしょうに。
そういう写真を見たがる人がたくさんいるから商売になるわけです。
殴られた感想を、奥さんにどのように愚痴ったのでしょうか

黒澤明初めての松竹映画らしいですが、
本当は見どころは沢山ある映画です。
山口淑子は美しいし、
脇を固める黒澤組の俳優は、相変わらず素晴らしい。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なかでも、私は千石規子さん
の演技が大好きです。
(この記事を書くにあたって、最近彼女が他界されたことを知りました。合掌)
 
何だかんだって。。。