映画「西鶴一代女」を鑑賞する!

映画「西鶴一代女」を鑑賞する!


 
1952年 日本
 
フランス
では、溝口健二の映画のDVDが巷に普及しているそうですが、
日本
では、なぜかこの映画は何処のレンタル屋さんにもリストされていません。
しかし、おそらく著作権が切れたので、DVDを安く購入できます。
この感想文を書くために、わざわざamozonで買い求めました。
ありがたく思いなさい。
 

 
 
私は、日本の古典文学に精通しているとは言えませんが、
井原西鶴(1642~1693)は、比較的親しんできた作家であります。
源氏物語などとは違って、
時代が近いので文章が読みやすいというのもあるでしょうが、
何と言っても、江戸庶民のバイタリティが感じられて、
私は好きなのであります。
因みに、世界で最初に源氏物語を英語に翻訳した
日本文学研究家(?)アーサー・ウェイリー(1889~1966)は、
この井原西鶴尾籠だ。」
と西洋に紹介致しませんでした。
この映画にも、やたらと娼婦が出てまいりますが、
なるほど、キリスト教倫理観
からすればそう映るのでしょうかね?
この映画のもとになっているという
原作「好色一代女」は、私は読んだことはないのですが、
随分映画とは違う話のようです。
もし、この映画のタイトルに「好色」と付けるのなら、
それはこの映画のヒロインお春を反語的に表現しているにすぎません。
確かに、お春はいろいろな男性と関係を持つに至りますが、
決して「好色」ではない。
むしろ、MMKの悲劇と言ってもいいかもしれません。
 

 
女性が自分の意見を持つことなど到底許されなかった時代に、
自我を持ってしまった女性の悲しいお話です。
映画の最初に、三船敏郎が珍しく二枚目として登場するので、
田中絹代さんは、この俳優と絡むのか?と思っておりましたら、
あっさりと打ち首にされてしまいます。
それからは、はては譜代大名から、贋金づくりの詐欺師まで、
お春の男性遍歴の転落が始まります。
 
 

 
 
女性の貞操という事が重んじられた時代にあっては、
こういうキャリアは、致命的なのは当然ですが、
その物語を紡ぐ溝口健二の視線はとても暖かいものです。
私は、西洋の受け売りのフェミニズムは大嫌いですが、
溝口が描くところの、日本の女性の悲劇には大変共感いたします。
西洋とは違って、むしろ本当の意味での強い男性がいない社会での、
女性のジレンマといったところでしょうか?
現代の、世界的に比較してもあまりにも恵まれた環境にある日本の若い女性が、
こういう映画を観るとどういう感想を持つのか?とふと考えました。

 

 
 
大変長いお話しでしたが、ところどころユーモラスな場面もあって、
なにより、出てくる俳優さんが芸達者なので、
飽きずに最後まで観ることができました。
田中絹代さんの一世一代の名演技。
溝口健二が得意とするワンシーン・ワンカット長回しが効果をあげており、
後のフランスヌーヴェルヴァーグに大きな影響を与えたそうであります。
 





 

 
大阪府枚方市の遊園地ひらかたパークアトラクションホール(旧ひらかた大菊人形会場)で主に撮影され、スタッフ及びキャストは当時営業していたひらかた温泉旅館(廃業)、鍵屋旅館(枚方市有形文化財 現在旅館はしていない)など京阪本線枚方公園駅前にて営業していた旅館に泊まり込み分宿して撮影を終えた。(ウィキペディアより)
 
この映画が、関西の人なら良くご存じのひらパーで撮影されたなんて、
ネットで調べて初めて知りました。
この界隈は、子供の時からよく遊んでいたところで、
溝口健二所縁の地だとは知りませんでした。
関西に住んでいると、こういう事がよくありますね。