映画「放浪記」を鑑賞する!(成瀬巳喜男監督作品)

映画「放浪記」を鑑賞する!(成瀬巳喜男監督作品)

1962年 日本
 

 
 
高峰秀子さんに関しては、今迄それほど関心がなかったんですが、
この映画を観て、その演技力に深く尊敬の念を抱くようになりました。
アメリなら、この映画でアカデミー主演女優賞を貰えたに違いない。
彼女は子役から大成した稀有な例らしいですが、
原節子「お嬢さん、良妻」しか演じられなかったのと比べてみても、
遥かに役柄に幅があって、まさに日本を代表する女優と言っていいでしょうね。
林芙美子の小説「放浪記」は、
ネットで調べてみると過去何度も映画化されているようですが、
観ていないのでいうのはあれですが、
きっとこの映画がぴか一
に違いないと思います。
森光子の例の「でんぐり返り」には、全く興味はありません。
それほど、素晴らしい出来の映画でした。

成瀬巳喜男監督の作家性とは何か?
ずばり、ダメ男
を描くという点にあるようです。
今まで観たすべての作品に、必ずダメ男が出てくる。
日本文学の流れには、
太宰治に代表されるようなだらしない色男
の歴史があって、
この映画にも、生活能力のない文士を気取ったナルシストが出てきますが、
私はこういう人物が大嫌いです。
(おそらく村上春樹の小説が特に女性に人気があるのは、
そういう日本文学の歴史に反旗を翻したからでしょうね。)
この映画は、
夜店商人、セルロイド女工、カフエの女給などの職を転々としながら、
そういうダメ男に、
次々と自分が損をすると判っていても尽くしてしまう女のお話しでした。
太宰治が、とても女にもてたのは有名な話ですから、
こういうタイプの男性は女性の母性本能をくすぐるのかもしれません。
でも、この映画の主人公の場合は、転んでもただでは起きない強かさで、
やがては、作家として世に認められるに至ります。
これは勿論林芙美子の自画像でしょうが、
思うに、いろいろな男性と交際することによって、
彼女は将来作家として大成する勉強を無意識のうちにしていたのでしょうね。
大恐慌時代の貧乏で貧乏な物語なんですけれど、
そこに何とも言えない明るさとバイタリティが感じられて、
全然暗くないいい映画でした。
 

 
 
小説「放浪記」が成功して、その後大作家になった晩年のシーンだけは、
映画として蛇足のような感じは致しましたが。。。
私の事を、男尊女卑の輩だと思っておられる方も多いと思いますが、
この映画に出てくるような
自立したエネルギッシュな向上心溢れる女性は大好きです。
人間として尊敬いたします。





 
 
 
「放浪記」は、やっぱり私は原作を読んでいなかったようなので、
この映画を観て、読んでみたくなりました。
Amazonで注文しようと思ったのですが、
よく考えてみると電子書籍青空文庫で無料で読めますよね。
全く有難い時代であります。