DVD「吉田喜重が語る小津安二郎の映画世界」を鑑賞する!

DVD「吉田喜重が語る小津安二郎の映画世界」を鑑賞する!



1993年 日本


「偏差値が上がると、利益が下がる」とは、堺屋太一さんの言葉ですが、
何度も書きますように、私はどうもインテリが理屈で作った映画は好きでない。
映画は、まずみんなが楽しめるものでなければならないし、
映画作りで大儲けして映画会社に貢献するのが、映画監督の一番の務めだと思う。
悔しかったら、まずE.T.を作ってから、ケージツ的な映画を撮れ!
小津安二郎の映画の事も、「聖なる映画」
なんて言う人がいるが、
撮った映画がずっと興行的に成功し続けて来たから、彼は巨匠になれたんでしょ?
松竹ヌーベルバーグの雄である吉田喜重の映画は観たことはありません。
あんまり、観たいとは思わない。
でも、もひとつ私にはよく判らない小津作品を理解するのに役立つかもしれないと、
このDVDを借りてみました。
独立した映画作品かと思いきや、NHKのTV番組を再編集したものでありました。
























小津作品の豊富な引用が、この作品の特典であります。
サイレント時代の貴重な作品から、最晩年の秋刀魚の味(1962年)に至るまで、
小津安二郎の作品群が俯瞰できるようになっております。
それだけでも、一見の価値はある。
どうして、小津作品では、同じ題材ばかりを繰り返し、繰り返し扱うのか
この私の長年の疑問に対して、
「反復とずれ」と言う考え方で説明してくれたのは収穫でした。
なるほどね。(この言葉は、80年代以降の思想的タームらしいです。)
ただ、言うまでもないことですが、
飽くまで「吉田喜重が語る」小津作品の話であります。
「無秩序」やらなんやら、矢鱈深遠な言葉を使って、
断定口調で作品を語るのには、少し抵抗を感じました。
小津安二郎は、意識的にそんな難しい事を考えていたのか?
一人の作家の一生涯の作品群を数少ない用語で語ってしまうのには、
無理があるのではないか?
吉田自身が言うように、小津作品は、「一つのシーンからあまりに多くの意味を捉えてしまうため我々は口を閉ざすしかない。」からであります。

それにしても、もう一度小津作品を観直したくなるいい番組でしたね。
TVも、こんな番組ばかり放映しているのなら、観る気になりますよね。