映画「風の中の牝雞」(1948年)小津安二郎作品

映画「風の中の牝雞」(1948年)小津安二郎作品





夫を戦地へ送り出した時子は、苦しいながらも子供と二人で生活していた。時子は友人の秋子に着物を預け、同じアパートに住む織江に買ってもらうことで生計を立てていた。ある日、息子の浩が病気になり入院してしまう。治療で浩は回復するが、時子には治療費を払うことができない。織江に相談した時子は、一夜だけ体を売ることで収入を得てしまう。浩は無事に退院するが、数日後、夫の修一が突然帰ってきた。修一は浩の入院を知り、その治療費について時子に問い詰める。

敗戦直後に作られたこの映画は、当時の荒んだ社会世相が描かれます。
公開時には時流に迎合した失敗作と目されていたようですが、
私には、案外面白かったです。




映画をよく観ればわかるように、
修一佐野周二)は、奥さんの一度の過ち(?)に対して怒っているのではない。
彼の焦燥と怒りは、
むしろそういう社会にしてしまった日本の男性の不甲斐無さに向けられているのは、
彼が、21歳の娼婦を立ち直らせるために尽力するエピソードでよく判ります。
黒澤明の初期のころの映画にも、
生活力がないために妻を寝取られる夫の話がよく出てまいりますが、
進駐軍貞操を奪われた当時の日本人
の怒りは相当なものだったのでしょうね。




しかし、子供を守って健気に生き、
夫に過ちを詫びる時子田中絹代)がこれではあまりに不憫です。
小津安二郎の映画にしては珍しい衝撃的な暴力シーンは、何か唐突な気がしました。












心の底では、苦労した妻を労わっているのなら、
階段から転げ落ちた時子をまず介抱してやれ!(笑)
今なら、夫はDVで訴えられるところですね。




色っぽい田中絹代

この映画に描かれるように、
日本
の夫婦と言うものは、対等な男女関係よるものではなく、
むしろ疑似母子関係であるという事は明白であります。
お母さんに駄々をこねているような、ご主人様でした。