小説「1Q84 」を読み終えて

小説「1Q84 」を読み終えて




割と早くに、読み終える事が出来ました。平易な文章なので、とても読みやすい。何でもかんでも小難しい事を書くと「文学的」だと思われがちな風潮の中で、こういう姿勢は大変好ましい事だと思います。誰でもわかる簡単な言葉で、深遠な思想を説く方が一番難しいはずですからね。
おそらく、村上春樹さんのストーリーテラーとしての才能は世界的に見てもぴか一だと私は思うのですが、長い小説を全然飽きさせずに最後まで読者を引っ張っていきます。この小説が出版されたときに、続編が読みたくて本屋に長い行列ができたのも、納得できます。実に興味深い「ファンタジー」でした。

ただ、(ここから、私の本領発揮です^^)私にとって、文学とは即ちやっぱり「文我苦」なんですよ。1ページ読み進めるのに四苦八苦して、何か月もかかって、苦労の末1冊を読み通す。よく判らないまま、それなりの感慨はある。そして、同じ作品を年を経て読み返してみて、その作品の中に若い頃には気付かなかった新たな発見をして、自分の成長を確かめる。そういう大層なものなんです。
この1Q84に関しては、一度読んで、あらすじが判ってしまえば、それでおしまい。素晴らしい表現は多々ありますが、年を経て新たな発見があるような深い文学だとは思えませんでした。
執拗な性描写に辟易するのは毎度のことなので繰り返しませんが、一番感じたのは、たった一度小学校の時に手を握り合っただけの男女が、離ればなれになって20年間もお互いに慕い続ける事なんてありうるだろうか?と言う疑問です。「それをいっちゃあ、おしまい」なのかもしれませんが、浮気性の私にはピンとこない。幼少期の不幸が人の心に深い傷を与える事は自分自身をかんがみても十分承知ですが、人生それだけじゃないでしょう。

面白かったけれど、感動しなかった。そういう小説でした。
この方、本当にノーベル賞を貰えるんでしょうかね


この後、村上春樹さんの短編集をもう一冊読んで、
それからなんとカラマーゾフの兄弟を再読する予定であります。