父の形見

父の形見




私の両親は、私がまだ子供の頃、別居をして、
以来、離婚はしませんでしたが、ほとんど生活を共にすることがありませんでした。
私は、母方の祖父母の実家に引き取られて育ったので、
父親の記憶があまりありません。
父親は、甘やかされて育った、性格の弱い、所謂「あほボン」でして、
親戚のコネで、一流会社に就職させてもらったものの、
仕事になじめず、以来、いろいろな仕事を転々として暮らしました。
家族を養う能力も責任感もない人でした。
一時期、古銭の行商みたいなことをしていた時代がありまして、
この写真
「近代コインアルバム」は、
その時に、私が父親から貰ったものです。
おそらく、生前、唯一の父親からのプレゼントです。
どういう訳で、このアルバムを私に譲ったのか、
今となっては父親の気持ちは分かりませんが、
父親を憎んできた私は、長い間これをほったらかしにしていました。



このアルバム、実は未完成なんですよね。
明治の初期の頃の銀貨が、コレクションから抜けているんです。
父親が他界して、20年以上になります。
なんとなく、このアルバムを完成してみたくなりました。

私の心の中で、
父親を許すことができるようになったんでしょうか?