「椿三十郎」・その2
「椿三十郎」・その2
案の定、人気のないこのコーナーですが、
私は、黒澤明の全作品を取り上げるつもりであります!
(興味のない方は、スルーしてください。)
この映画の私の好きなところのもう一つは、
賢明な奥方とは対照的に、
若いボーイスカウト的侍を、徹底的に愚かに描いている事です。
有名な黒沢映画研究家のドナルド・リチーは、こう書いています。
時代劇を使った効果は、勿論時代劇そのものの実にみごとなパロディである、ボーイスカウト侍全員九名が、彼らにうんざりしている三十郎の後を従順にヨチヨチ歩いて行くのを見せるとき、黒澤は、侍の弱点は常に何かに加わらねばならぬ事、常に誰かに従わねばなぬ事だと言っているのである。
(ドナルド・リチー著『黒澤明の映画』)
この欠点は、今日の日本男性にも、当てはまる事ではないでしょうか?
ちなみに、黒澤明に心酔し、自らを『黒澤の弟子』と呼ぶG.ルーカスは、
かの有名な『スターウォーズ』で、
この映画へのオマージュを演出しています。
(『スターウォーズ』シリーズには、全編を通じて、黒澤作品へのオマージュが散見されます。)
そして有名な、最後の椿三十郎と、室戸半兵衛(仲代達代)との、決闘シーン。
室戸の心臓から血しぶきが噴出するそのリアルさは、
当時の観客の度肝を抜いたそうですが、
安易に人が死ぬチャンバラ映画への、
強烈な批判となっていますね。
そうそう、忘れていました。
今回の騒動の結末を嘆き、
一同をリラックスさせるために笑わせるその大らかさ。
大賢は小愚に似たり
というテーマにぴったりの結末でした。
※最近、全く同じ脚本で、リメイクされたようですか、
あまり評判は良くなかったようです。