「ダンス・ダンス・ダンス」

ダンス・ダンス・ダンス

大江健三郎が、ノーベル賞をもらった時に、
「私の小説は、村上春樹のように売れませんから。。。」と、
ノーベル賞の賞金を喜んでいましたが、
確かに、村上春樹の小説は面白い。よく売れるでしょう。
へそ曲りの猫さん
からすると、
村上春樹にはまっているなんて、○○○みたいで嫌なんですが、
ダンス・ダンス・ダンスを読み終わると、すぐに、
ねじまき鳥クロニクルを買ってしまいました。


 
で、ダンス・ダンス・ダンスの感想。
この作品の前編に当たる羊をめぐる冒険は、
かなり以前に読んだので、内容を忘れてしまいました。
でも、そんなこと関係なしに、楽しめました。
海辺のカフカ程感動はしませんでしたが、物語の語り口はやはり天下一品です。
本が出版されてたのは1988年で、まさにバブル経済の絶頂期
デュラン・デュランとか、カルチャー クラブとか、
トーキング ヘッズとかE.T.とか、
出てくる小道具が懐かしい。
(こういうのを知らない若い人は、どういうふうに読むんでしょうか?)
この頃の村上春樹には、高度に発達した資本主義への批判が強いそうですが、
つまりは何でもお金で買えることへの批判と云う事?
 
例によって、主人公の男性は
する事ばかり考えているようで、
女性と出会えば
する。
ホテルのフロントの女の子に恋をするし、コールガールも買う。
さすがに、13歳の不登校の女の子とは
しなかったが、
特殊な感受性を持つこのユキと云う女の子は、大変チャーミングでした。
 
「馬鹿みたい。」(彼女の口癖)
 
何をしても、そつがなく、かっこ良く、
皆に愛される人気俳優が内面に抱えた巨大な空虚。
これは、アルコールばかり飲んで死んでしまった石原裕次郎を連想させました。
こういう話は、リアリティがあります。
 
ただ、物語の途中で殺されてしまう二十歳のコールガールがいて、
情事の後に、朝、「かっこう」と鳴く事が、物語のカギとして再三出てきましたが、
これって、大変下品じゃないですか?
コールガールは、コールガール。
ストッキングで首を絞められて当然でしょう。
それと、批判の対象になっている高度に発達した資本主義が、
現在日本においては急速に衰退に向かっているので、
お話が少し色褪せて見えたのも、否めませんでした。
でも、全体としていい小説であった事は、間違いありません。
若い人の感想を訊いてみたいですね。

■二行でわかるダンス・ダンス・ダンス
「馬鹿みたい。」
「やれやれ。」