映画「テンダー マーシー」を鑑賞する!

映画「テンダー マーシー」を鑑賞する!

1982年 アメリ
 

 
 
あらすじ:テキサスのモーテル。マック・スレッジは、若く美しい未亡人ローザに雑用係として雇われる。かつては有名なカントリー・シンガーだったが、結婚生活に失敗、酒浸りの日々を送るマックだったが、ローザと息子サニーとの触れ合いで何かを取り戻そうとしていた。元の妻で歌手のディクシーに娘と会わせてもらえず、やりきれない気持ちになるマックだったが、若手のカントリー・バンドに曲を提供した事がきっかけとなり、レコード・カムバックの話が持ち上がる。すべてがうまく行きかけたかに見えたが……。
 
 
私の好きな俳優ロバート・デュバルが、
各映画賞の主演男優賞を総なめにしたにもかかわらず、
日本では劇場未公開の映画です。
従って、知る人は少ないでしょう。
なんでも、アル中の役を演じると、
アカデミー主演男優賞を貰えるというジンクスがあるそうですが、
私は、この地味な映画でロバート・デュバルが受賞したのは、
アカデミー会員の彼の過去の偉大な業績への敬意だったと思います。
その後、ゴッドファーザー PART3」への出演要請があった時、
「私はもう、脇役を演じる役者ではない。」と主役級のギャラを要求したので、
話が流れたというエピソードもあったそうですが、
その後の彼の出演作を観ていても、
必ずしも「ビックスター」 
とは呼べない。(笑)
映画に関する鑑識眼の高い猫さん 
のような人は
アメリカでも例外なんでしょう。
でも、You Tubeの動画を観ていると、↓
映画人がいかに彼を尊敬しているのかがよくわかります。

 
 
 
本題に戻って、この映画の話をすると、
私にはとても気持ちの良い映画でした。
兎に角、「悪人」と呼べる人が一人も出てこない。
途中、ガラの悪い男連れの数人がモーテルに表れたので、
すわ、乱闘シーンが始まるのかと思いきや、
実は彼らは主人公を尊敬するバンドグループなのでありました。(笑)
 

 
 
若い女性一人で、モーテルを経営して、
アメリカってこんなに治安がいいのだろうか
と訝りたくなるぐらい、
暴力描写のない静かな映画でした。
代わりに全編を覆うのはカントリーミュージック
音痴の猫さんでも、良さは分かります。
ロバート・デュバルが自ら5曲を歌い、
うち2曲は作詞作曲もしているそうです。
主人公が、どうして身を持ち崩すまでアルコールにのめり込み、
それがいとも簡単に克服できたのかは理解に苦しむ処でしたが、
この際、そんなことはどうでもよろしい。
この時代の映画の特徴として、
やはりベトナム戦争の影というものが作品に織り込まれております。
そういう60~70年代に失ってしまった「古き良き素朴なアメリカ人」への郷愁が、
この映画をイノセントなものにしているのかもしれません。
 

 
 
元の妻の娘を演じる若き日のエレン・バーキンがとてもチャーミング
 
こういう「掘り出し物」を見つけると、
映画ファンとしては、嬉しいものがありますね。
日本で公開されなかったのは、
やはり、キリスト教的な部分が理解されづらかったのではないかと思われます。
 



 
追記:未亡人ローザは、熱心なバプテスト(キリスト教の一派)信者で、主人公マックも、最後にはこの宗教の洗礼を受けることになります。そういう部分が、日本人にはなじみが薄いという事です。