映画「近松物語」を鑑賞する!

映画「近松物語」を鑑賞する!

(1954年 日本)


 
 
いやあ、久しぶりに素晴らしい映画を観ました。
この映画は、監督溝口健二、脚本依田義賢、音楽早坂文雄、撮影宮川一夫
主演長谷川一夫香川京子。。。
まさに、日本映画のオールスター夢の競演といった処でしょうが、
期待にたがわず、素晴らしい出来の映画でした。
私は実は、長谷川一夫の演技を観るの初めてでしたが、流石は大スター
仲代達矢より100倍上手い。
仲代達矢の演技が大袈裟なのは、
舞台俳優出身だからなどと言うのは明らかに間違いです。
(話が関係ない方向にずれました。
それと、南田洋子というと、晩年のお姿しか知らなかったんですが、
こういう映画にも出演されていたんですね。
とても初々しかったです。
 

 
 
原作は近松門左衛門人形浄瑠璃・歌舞伎の演目『大経師昔暦』(だいきょうじ むかしごよみ、通称「おさん茂兵衛」)だそうで、
近松封建時代に生きる人間の悲しさを描いたとはよく言われる話です。
しかし、この映画で語られる「世間」の不条理は、
今の時代でも何も変わっていないと私は思います。
私が何度も引用する阿部謹也先生著「『世間』とはなにか」においては、
井原西鶴をテキストに使われておりますが、
近松門左衛門も同じような主題を扱ったのでしょう。
夏目漱石も、小説「それから」において、
「世間」に対峙するものとしての恋愛を主題にしたように私には感じられます。
不条理な世間への唯一の抗議は、
悲劇的な恋愛という形しかとれないのでしょうか?
(私が、現代の邦画をあまり好きになれないのは、
こういった重大な問題を避けて通っているような気がするからです。)
 
 

 
 
(1953年)と同様に、音楽が素晴らしかったです。、
これは早坂文雄の才能に帰するところが大きいでしょうね。
今回初めて知ったのですが、
美術監督を務めておられる水谷浩と言う方も、
大変著名な方だそうで、
相変らず、見事なセット、衣装でした。
「これぞ映画だ
と言う感想で、
私としてはケチをつけようがありませんでした。

溝口作品を、また観てみたくなりました。