「七人の侍」その1

七人の侍」その1


 
はっはっは・・・こいつぁいいや!
やい!お前たち!一体百姓を何だと思ってたんだ?仏様だとでも思ってたか?ん?
笑わせちゃいけねえや!百姓くらい悪ずれした生き物はねえんだぜ!
米出せっちゃ無え!麦出せっちゃ無え!何もかも無えっつんだ!ふん!ところがあるんだ。何だってあるんだ。
床下ひっぺがして掘ってみな!そこになかったら納屋の隅だ!出てくる出てくる・・・瓶に入った米!塩!豆!酒!山と山の間に行ってみろ!そこには隠し田だ!正直ヅラしてペコペコ頭下げて嘘をつく!何でもごまかす!どっかに戦でもありゃあすぐ竹槍つくって落ち武者狩りだ!
よく聞きな!百姓ってのはな、けちんぼで、ずるくて、泣き虫で、意地悪で、間抜けで、人殺しだ!ちきしょう!おかしくって涙が出らあ!
だがな、そんな「けだもの」をつくったの、一体誰だ?  お前たちだよ!侍だってんだよ!馬鹿野郎!
戦の度に村を焼く!田畑踏ん潰す!食い物は取り上げる!人夫人にコキ使う!女は犯す!手向かや殺す!
一体百姓はどうすりゃあいいんだ!百姓はどうすりゃあいいんだ、百姓は・・・
ちきしょう・・・・ちきしょう・・・!

 
映画を観ていない人には、何のことやらわからないでしょうけれど、
三船敏郎の演技が圧巻の、私が大好きなシーンの一つです。
「哀れな百姓たち」を救いにやってきた侍たちが、
実は百姓たちが落ち武者狩りをしているのを発見して、腹を立てる。
その様子を見て、菊千代様三船敏郎)が言うのが、上のセリフです。
 
若い頃に、日本プロレタリア芸術同盟に属していた黒澤明は、
何時、マルクス主義から転向したのでしょうか?
この三船敏郎のセリフは、
当時世界で隆盛を極めた共産主義への
強烈な批判になっていると私は思うんですが。
 
「映画『七人の侍』で、黒澤明は農民を愚弄した。」
 
と書いた評論家もいましたが、
今では、世界的な名作として定着しているこの映画が、
公開当時は、日本
では今ほど評価されなかったのも、
マルクス主義に染まっていた当時の知識人の神経を
逆撫でしたせいかもわかりませんね。
時流に迎合した映画は、その時代には持て囃されても、
時間とともに忘れ去られます。
やはり、自分の目で見る事、自分の頭で考える事が、
何時の時代でも大切だと私は思うのです。
 
黒澤明フェミニズムにも迎合しなかった。。。(笑)