「成熟と喪失 ”母”の崩壊」 江藤淳著

「成熟と喪失 ”母”の崩壊」 江藤淳





「成熟」するとは、喪失感の空洞のなかに湧いて来るこの「悪」をひきうけることである(本文より)
「海辺の光景」「抱擁家族」「沈黙」「星と月は天の穴」「夕べの雲」など戦後日本の小説をとおし、母と子のかかわりを分析。母子密着の日本型文化の中では“母”の崩壊なしに「成熟」はありえないと論じ、真の近代思想と日本社会の近代化の実相のずれを指摘した先駆的評論。


先日書きました職場で私達を悩ませている問題児
、母子家庭に育った一人っ子だったと聞いて、なんか納得がいくような気がいたしました。私だって、似たような環境に育ったので、人のことはとやかく言えませんし、人をその成育歴からレッテルを貼ってしまうのも、とんでもない差別に結び付く危険性があるとは思うんですが、この我儘な問題児と長年付き合っていると、「父親を知らない人だなあ。」と何となく感じてしまうのでありました。(私には、明治生まれの祖父がいました。)
もっとも、日本の心理学者、精神分析家に言わせると、日本人はまだ父親を発明していないのだそうですが、この問題児に限らず、日本人はことのほか、父親よりも母親との結びつきが強い傾向があるようですね。だから、母の愛を疑うなんて、とんでもないことになる。






どういう経緯だかは忘れましたが、江藤淳のこの本を読んでみたくなりました。Amazonで注文しました。私は、この方の著作はほとんど読んだことがないのですが、面白ければ続けて他の著作も読みたい。




江藤淳と聞けば、右翼的思想の持主として敬遠される方もおられるでしょうが、例えば三島由紀夫だとか、黛敏郎だとか、西部邁榊原英資など、西洋文化の教養を深く身に着けた知識人が、極端な愛国主義
に変貌するのはなぜか?という点に、私は興味があるのであります。
軽薄な進歩的左翼知識人より、なぜか私の関心を引き付けるのであります。